慢性的な人手不足に立ち向かう――小売業界に求められる“働き方の再設計”
労働問題労働環境改善2025年5月13日
日本の小売業界はいま、かつてない構造的課題に直面しています。少子高齢化の加速と、働き方の価値観が多様化する中で、「慢性的な人手不足」が常態化しているのです。
フルタイム志向の減少と多様なニーズへの対応
かつて主力だったフルタイム勤務者は年々減少傾向にあり、代わってパートタイム、副業希望者、シニア層や外国人労働者が職場の中心となりつつあります。これは「働く時間や働き方を自ら選びたい」という意識の変化によるものです。
そのため、企業側も従来の固定的な労働時間や職務体系を見直し、柔軟なシフト制度の導入が急務となっています。週2~3日、1日数時間から働ける仕組みを整えることが、労働力確保の鍵となるでしょう。
※参考:「労働経済白書(令和5年版)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34937.html
テクノロジーによる業務効率化の加速
現場では、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が進んでいます。例えば、発注業務の自動化、在庫管理のAI化、セルフレジや電子棚札の導入など、人手を必要とする業務の軽減が図られています。
※参考:「DX推進のための中小企業向けガイドライン」経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/infrastructure/dx-g.html
ただし、テクノロジーの導入はあくまでも“人を補完する手段”であり、働きやすい環境を整えるための一環として位置づけるべきです。
働き手の健康と生活を守る環境整備
人手不足の煽りを受け、長時間労働や不規則な勤務が常態化し、従業員の心身に大きな負担がかかっています。これにより、離職率の上昇やメンタルヘルス不調といった新たな課題も浮上しています。
今こそ、小売業界全体でワークライフバランスを確保できる労働環境の再設計が求められています。過度なシフト依存や突発的な欠勤の穴埋め文化から脱却し、従業員一人ひとりの「働きやすさ」に目を向ける必要があります。
※参考:「健康経営の推進」経済産業省・厚生労働省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
「持続可能な働き方」こそ競争力の源泉に
小売業界の競争力を保つためには、ただ人を雇うだけではなく、「どう働いてもらうか」にも目を向けなければなりません。労働者が長く・安心して働き続けられる仕組みは、企業の安定的な成長と、顧客サービスの質向上にも直結します。
少子高齢化という不可逆な変化の中で、柔軟性と共生性を兼ね備えた労働環境をどのように築くか――小売業界の未来は、その問いへの答えにかかっているのです。
本記事は、厚生労働省および経済産業省の公表資料をもとに、労働組合の立場から再整理・解説したものです。法制度や政策の詳細については、各省庁の公式ガイドラインをご確認ください。